はじめに:英文パターンは「英語の長文読解」ではない!

「海外のパターンを編んでみたいけれど、英語のパターンはハードルが高そう……」とためらっていませんか?

実は、英文パターンは高度な英語力がなくても挑戦できます。編み物の英文パターンは、長文の英語を読むというよりも「決められた略語で書かれたレシピ(手順書)」のようなものです。

一度ルールと構造を理解してしまえば、そこまで難しくはありません。
また最近はChatGPTやGeminiなどのAIツールが優秀で、わからない箇所の翻訳を手伝ってもらうと、さらにストレスなく編めるようになります。

※AIの翻訳や解釈が常に正しいとは限りません。目数が合わない場合や説明に矛盾がある場合は、パターン内の略語表やデザイナーの説明を優先し、原文と照らし合わせて確認しましょう。

今回は、初めて英文パターンに挑戦する方に向けて、日本の編み図との違いやパターンの基本構成、編み始める前に知っておきたい基本の決まりをまとめました。
この記事では、主に棒針編みの英文パターンを取り上げています。

かぎ針編みの英文パターンは、略語も編み目の呼び方も棒針とは別の体系です。あらためて別の記事でまとめる予定です。

日本でよく使われる「編み図」と英文パターンの違い

日本で出版される編み物本では、記号を使った編み図が多く見られます。一方、英語圏のパターンでは、編み方を文章と略語で順番に示す文章パターン(written pattern)がよく使われます。

大きな違いのひとつが、「視点(どちらの面から見ているか)」にあります。

日本の編み図と英文パターンの書き方の違いを比較した図。メリヤス編み2段は、日本の編み図では2段とも表目の記号で表すのに対し、英文パターンではRow 1 (RS)がKnit、Row 2 (WS)がPurlと面ごとに変わる

日本でよく見る編み図は、基本的に「作品の表側から見た完成形」が記号で示されています。そのため、平編みで裏側を編むときは、頭の中で表目を裏目に読み替える必要があります。

それに対して一般的な文章パターンは「いま自分の目の前にある編み地(作業面)」に対して、実際に行う操作が、略語や文章で順番に示されています。

「裏側を編む段で p(裏目)と書いてあれば、そのまま裏目を編めばよい」という仕組みなので、一度慣れてしまうと脳内で変換するストレスがなく、編み進めやすく感じる人も多いと思います。

英文パターンの基本構成

英文パターンでは、はじめに以下のような項目が並んでいます。これから編む作品についての情報が記載されているので、いきなり編み始めるのではなく、作品全体のイメージを掴むためにもまずは確認しましょう。デザイナーさんや出版社によって順序や名称、項目が異なることがあります。

中でも「Abbreviations」(略語)は、そのパターンでよく使われる略語や技法が解説されているのでじっくり確認しておくことが大切です。

1. Materials(材料・道具)

  • 使用する糸(ブランド名・色番・必要玉数や必要メートル数)
  • 使用する針のサイズ
  • 必要な道具(目数マーカー、とじ針、ボタンなど)

【英文パターンで輪針がよく使われる理由】

英文パターンでは、セーターを襟元からとじはぎの少ない「トップダウン」をはじめ、輪針を多用するデザインが多く見られます。輪針は輪編みだけでなく、往復編みにも使えます。多くの目をコード部分に保持でき、編み地の重さを分散しやすいため、身頃やショールなど幅の広い作品にも便利です。

2. Sizes / Finished Measurements(サイズ/仕上がり寸法)

  • 仕上がり寸法がサイズ別に記載されています。

3. Gauge(ゲージ)

  • 指定された編み地を編み、10cm(または4インチ)の幅と高さに何目・何段入るかを確認します。正確に測るため、スワッチは10cm四方よりも大きめに編み、必要に応じて水通しやブロッキングをしてから測ります。ブロッキング後のゲージが指定されている場合もあります。

※ゲージを測るときは、窓から目数・段数を数えられるゲージ定規があると正確で早いです。(例:Prym ニッティングゲージ)

4. Abbreviations(略語一覧)

  • パターン内で使われる略記号の説明。
  • そのパターン独自の技法もここに書かれるので必ず読む

5. Instructions(編み方の指示)

  • ここから実際の編み方の手順が始まります。
  • Body / Sleeves / Yoke など、部位ごとにセクション分けされています。
  • 1行の読み方は、後半の「Instructions(編み方の指示)の読み方」で解説します。

作品タイプ別のセクションの並び

作品タイプごとに、たとえば次のような順番で並んでいます。「いま自分は全体のどこを編んでいるのか」を意識すると、長いパターンでも迷子になりません。

トップダウンのセーター

Cast on(作り目) → Neckband(襟ぐり) → Yoke(ヨーク・増し目) → Divide for Sleeves(袖の分岐) → Body(身頃) → Sleeves(袖) → Finishing(仕上げ)

帽子

Brim(ゴム編み) → Body(本体) → Crown(トップの減目) → Finishing

ショール

Set-up(準備段) → Body(模様の繰り返し) → Border / Edging(縁編み) → Bind off(伏せ止め)

編み始める前にセクションの見出しだけをざっと眺めておくと、作品の組み立て方が頭に入って、指示の意味も理解しやすくなります。

編む前に知っておきたい「針」と「糸」の選び方

海外パターンを日本の道具や糸で編む場合、以下の2点に注意が必要です。

① 棒針・輪針の号数(mm表記を確認する)
日本の針と海外の針は、号数と実際の太さ(ミリ数)の対応が異なります。

  • 日本の規格:0~15号では、おもに0.3mm刻み(例:4号=3.3mm、5号=3.6mm、6号=3.9mm)
  • US規格:0.25mmまたは0.5mm刻み(例:US 4=3.5mm、US 5=3.75mm、US 6=4.0mm、US 7=4.5mm)

英文パターンには「US 6 / 4.0 mm」のようにミリ(mm)表記が併記されていることが多いため、ミリ数を基準に近い太さの日本の針を選ぶか、海外規格の針を使うのがスムーズです。サイズ通りに仕上げたい場合には、必ず事前にスワッチ(試し編み)を編んで、指定のゲージに合う針を選びましょう。

棒針のサイズ変換表 草木と羊 › 編み針サイズ変換表 編みものは、世界中で長く愛されてきた手仕事です。それゆえに、編み針のサイズの呼び...

② 代替糸の選び方
パターンには、実際にデザイナーさんが編んだ海外の指定糸やおすすめの毛糸が記載されています。それらの毛糸が手に入りにくい場合は、別の糸で代用します。

代替糸を選ぶときは、50gまたは100gあたりの長さと、Fingering、DK、Worstedなどの太さのカテゴリーを手がかりにします。ただし、同じ長さやカテゴリーでも、素材、撚り、毛羽立ちによって編み地の厚さや落ち感は変わります。指定ゲージを確認し、必要な総メートル数に余裕を持って用意しましょう。

【太さから代替糸を探す】

草木と羊では、毛糸を太さ別のカテゴリーに分けています。
代替糸を探すときには以下のリンクも参考にどうぞ。

Fingering(UK表記では4ply)
Worsted
Aran
毛糸をすべて見る

海外毛糸の表記が難しい-日本の太さに変換 草木と羊 › 海外パターンの毛糸表記、どう読む?英語の表記をわかりやすく 海外毛糸サイズ一覧表 海外の編み物パター...

最初に覚えたい英文パターンの頻出略語

棒針編みのパターンでよく使われる基本的な略語です。
まずはここから覚えて、新しく出てきたものは確認しながら編みましょう!

k (knit):表目

p (purl):裏目

st(s) (stitch / stitches):目、目数

RS / WS (Right Side / Wrong Side):編み地の表側/裏側

k2tog (knit 2 together):左上2目一度(編み地の表側では右に傾く減目)

ssk (slip, slip, knit):右上2目一度(編み地の表側では左に傾く減目)

yo (yarn over):かけ目

pm / sm (place marker / slip marker):マーカーを入れる/左針から右針にマーカー移す

海外パターン略記号の早見表 草木と羊 › 海外パターン略記号の早見表 海外パターン略記号の早見表 海外の編み物パターンは、英語の編み目名を略語で表記するの...

【アメリカ式(US)とイギリス式(UK)の違い】

英文パターンにはUS表記とUK表記があり、同じ操作でも呼び方が変わります。棒針編みでよく出るのは次の3つです。

・bind off(US)= cast off(UK):伏せ止め
・gauge(US)= tension(UK):ゲージ
・糸の太さ:Fingering(US)= 4ply(UK)、Worsted(US)= Aran(UK)

イギリスやオーストラリアのデザイナーさんの作品はUK表記のことが多いので、見慣れない単語が出てきたら「UK表記かも」と疑ってみてください。

早見表にも載っていない略語や編み方が出てきたら、その都度 GoogleやYouTubeなどで検索してみましょう。謎解きのような気持ちで、一つずつ解決しながら編むうちに、頻出する略語や文章のリズムが自然と身についてきます。

Instructions(編み方の指示)の読み方

Materials や Gauge を確認したら、いよいよ Instructions です。ここからが編み方の本体になります。

一見すると暗号のように見えますが、実は「1行の型」と「いくつかの記号のルール」しかありません。この2つを押さえてしまえば、あとはその繰り返しです。

まずは「1行の型」を覚える

英文パターンの1行は、どれも同じ形をしています。

英文パターン1行の構造を分解した図。Row 1が段の名前、(RS)が編んでいる面、コロンの後ろが実際の操作、末尾の(60 sts)が編み終わりの目数を表す

いちばん大事なのが最後の (60 sts) です。ここが合っていれば、その段は正しく編めています。合わなければ、その段のどこかで間違えているサインなので、次に進む前に戻って確認しましょう。

数え直しは面倒に感じますが、10段先で気づくより何倍もラクです。

覚えておきたい記号のルール

  • * 〜 ; … 繰り返しの単位。英文の「rep from *」は「*のところに戻って繰り返す」という意味
  • [ ] や ( ) + 回数 … 囲みの中を指定回数くり返す
  • to end … 段の最後まで続ける
  • to last 2 sts … 残り2目になるまで続ける
  • 3 (4, 5, 6) … サイズ別の数字。括弧の外がいちばん小さいサイズ(ベースサイズ)

to end と to last ○ sts の違いは見落としやすいので、目数が合わないときはまずここを疑ってみてください。

なお、括弧やアスタリスクの使い方はパターンによって異なります。冒頭の Abbreviations(略語一覧)に注意書きがないか、編み始める前に確認しましょう。

実際の1行を読んでみる

Rnd 5: *k2, p2; rep from * to end. (48 sts)

→ 「5段目:*表目2目、裏目2目; *から段の終わりまで繰り返す(48目)」

・Rnd=Round(輪編みの段)
・「*」から「;」までが繰り返しの1セット(ここでは「表目2目、裏目2目」)
・文末の(48 sts)は、この段を編み終えた時点の目数の確認用

Row 12: k1, [k2tog, k1] 3 times, k to end. (32 sts, dec 3 sts)

→ 「12段目:表目1目、[左上2目一度、表目1目]を3回、残りは最後まで表目(32目・3目減)」

・[ ]の中を指定回数繰り返す
・「k to end」=指定なく最後まで表目、というよくある言い回し
・dec 3 sts=この段で3目減った、という確認用の情報

Sizes: S (M, L, XL)
Row 20: k1, [k2tog, k1] 3 (4, 5, 6) times, k to end.

→ 「20段目:表目1目、[左上2目一度、表目1目]をSなら3回、Mなら4回、Lなら5回、XLなら6回、残りは最後まで表目」

・括弧の外の数字がベースサイズ(この場合はS)
・自分のサイズの数字だけ追えばOK

【AIに聞くときのコツ】

どうしても読み解けない行が出てきたら、ChatGPTやGeminiに聞くのも手です。そのとき、その1行だけでなく、パターン冒頭の Abbreviations(略語一覧)も一緒に貼ると、デザイナーさん独自の略語まで踏まえた答えが返ってきます。

ただしAIは目数の計算を間違えることがあります。返ってきた解釈のとおりに編んだら、必ず段末の目数が ( ) の数字と合うかを自分の目で確かめましょう。

略語表に載っていない「定型表現」

Abbreviations には載らないのに、当たり前のように出てくる言い回しがあります。ここでつまずく方が多いので、先に知っておくと安心です。

Work even … 増減なしで、そのまま編み続ける
Work in pattern(work in patt) … それまでの模様を続けて編む
Repeat Rows 3-4 until piece measures ○ cm … 指定の長さになるまで3〜4段目をくり返す
Ending with a WS row … 裏面の段を編み終えたところで次に進む
AT THE SAME TIME … 別の指示と同時に進行させる

編みながらのチェック習慣

最後に、英文パターンを気持ちよく編み進めるための3つの習慣です。

①段末の目数を毎回数える … ( ) の数字と合っているか
②自分のサイズに蛍光ペン … 編み始める前にすべてマークしておく
③段数カウンターを使う … 「何段目まで編んだか」を手元に残す

慣れないうちは面倒に感じますが、この3つをやっておくと、ほどき直しがぐっと減ります。

最初の一歩におすすめのパターン入手先

最初は、すでに編んだ経験のあるアイテムや、使われている技法が少ない作品を選ぶと、英文の指示と実際の編み方を結び付けやすくなります。
無料のパターンから探してみるのもおすすめです。

どうしても編んでみたい作品を見つけたら、有料・無料にかかわらず「これを完成させたい」というモチベーションにつながるので優先してもよいと思います。

Ravelry(ラベリー): 世界中の編み物愛好家が利用するサイトです。パターンを検索するには、無料のアカウント登録とログインが必要です。カテゴリー、言語、糸の太さなどで検索でき、プロジェクト数、評価、完成作品の写真、利用者のコメントも確認できます。
ただ眺めていても、どれを編もうかと夢が広がる楽しいサイトです。

ラベリーで無料パターンを検索すると、ありがたいことにたくさんの作品が出てきます。編んでみたくなるかわいい作品ばかりです。(リンクは、アカウント登録・ログインしてからクリックしてください)
└ラベリー:英語無料パターン

日本語の無料パターンもたくさんあります。英語版と日本語版の両方が用意されている作品もあるので、見比べながら編むのも理解が進みます。
└ラベリー:日本語無料パターン

Symfonie Yarns:シンフォニーヤーンのパターン掲載ページです。無料でダウンロードできる作品を含め、セーター、カウル、マフラー、靴下など幅広く揃っています。作品によっては有料なので、価格表示を確認してください。

West Yorkshire Spinners:ウェストヨークシャースピナーズのパターン掲載ページでは無料パターンが充実しており、セーターや靴下のほかにベビー服やオーナメントなど幅広いアイテムが揃っています。

その他、海外の毛糸メーカーが無料パターンを提供していることも多く、写真や図が充実しているのでお気に入りのパターンを見つけてみてください。

「free knitting patterns」などで検索するとさまざまな無料パターンが見つかります。
世界中で編み物が楽しまれていることが改めて実感できますね。

おわりに

英文パターンは、最初のうちは略語表とにらめっこになりますが、一度リズムを掴むと「いま自分が全体のどこを編んでいるのか」が手に取るようにわかり、パズルを解いていくような心地よい楽しさがあります。

最初の一歩には、サイズを厳密に合わせなくても使いやすく、ガーター編みやメリヤス編みを中心としたカウル、マフラー、帽子などがおすすめです。三角ショールやニットトイを選ぶ場合も、使う技法が少なく、模様の繰り返しがわかりやすい作品を選びましょう。
ウェアに挑戦するなら、増し目の位置がわかりやすく、使われている技法が少ないトップダウンのラグランセーターが比較的取り組みやすいと思います!

お気に入りの毛糸と手になじむ針を用意して、ぜひ新しい編み物の扉を開いてみてください。

■ 編みながら開いておくと便利なページ

・海外パターン略記号の早見表
編みながら開いておける略語の一覧です。

・棒針のサイズ変換表
US表記・ミリ数・日本の号数の対応をまとめています。

・海外毛糸の表記が難しい|日本の太さに変換
代替糸を選ぶときに。

■ 道具をそろえるなら

英文パターンはトップダウンのセーターをはじめ輪針を使うデザインが多いので、最初の1本は輪針がおすすめです。選び方ははじめての輪針、どれを買えばいい?付け替え式 vs 固定式を比較にまとめています。

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